ここで、トースターが発明された
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rwnd.jpに乗せるコラムの下書きでしたが、畑違いということでボツ。諸事情でこっちで先に掲載。
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ヨーヨーが世界一うまい人って、どんな人だと思いますか?
全国チャンピオン・世界チャンピオンといったコンテスタントの頂点、ヨーヨーマスター、ヨーヨーパフォーマー、ヨーヨーアーティスト。ヨーヨーをプレイし、目的はどうあれ人に見せることを生業とする人たちは、これらの名で呼ぶことが多いです。
この中でも、世界チャンピオンの場合「世界で一番うまい人なんでしょ」と、よく聞かれます。名前の響きからしてそうなんで、そう聞かれるのは当たり前です。
でも僕はその質問は違うと思うんです。僕と同意見の人はかなり多いと思います。
確かに世界大会という大舞台で、最高に緊張する場面で力のすべてを出し切り、下位にポイント差をつけてその大会で優勝したことに間違いはありません。
しかし見方を広げれば、それはとても小さな一瞬にすぎません。
いつかの世界大会の日、3分という短いステージで、世界大会のルールで、あの瞬間・あの環境では一番上手かった。それだけにすぎません。
もちろん競技大会のルールは、難しいことに点数が高く配分されたり、出来る限りヨーヨーがうまい人に点数が高くなっていますが、それも結局「出来る限り」やっているだけで、本当に世界で一番ヨーヨーがうまい人を決めているわけではありません。
他の世界でもわかりやすく例えることができます。
例えば「走り」。ウサイン・ボルト選手は100M、200M走の金メダリスト。9秒中盤で走り切るその足で、自身の世界記録を未だ更新しつづけている驚異の金メダリストです。しかし長距離となれば話は別で、フルマラソンならばどうか、競歩は、長距離は、ジャングルの中は、となるのがカンタンに想像できるのではないでしょうか。「泳ぎ」でも北島康介選手は100M、200Mの平泳ぎの金メダリストですが、バタフライならどうでしょうか。汚れた水の中では、視界の悪い水の中では、犬かきでは。
…これが、ヨーヨーにも全く同じ応用ができるのです。世界大会だろうがなんであろうが、チャンピオンにもできないトリックはやまほどあり、勝てないルールはいくらでもあります。
ひとまず世界チャンピオン≠世界一ヨーヨーがうまいという話はこの辺にしておいて次へ。
じゃあ世界一ヨーヨーがうまい人ってどういうことなの、と振り出しに戻ったわけですが…これも結局、審査する人によるんですね。
今現在ヨーヨーにどっぷり浸かっている人なら、具体的にプレイヤーの名前がでてきたり、持っているトリック数が一番多い人だとかそんな感じでしょうか。例外ですが、ハイパーヨーヨーをはじめたての子であれば「認定トリックが全部できる人」「アラウンドザワールド100周出来る人」、世代によっては「犬の散歩でずーっと向こうまで走れる人」なんて人もいますね。
では、誰にでもヨーヨーがうまいと言われるための条件はなんでしょうか。
僕の結論は「トラピーズが一番うまい人」です。
ジョブの男性が行う理由はいろいろあります。
トラピーズはプレイヤーのあらゆるステータスを丸裸にします。その中でも一番大きいのが、正確にヨーヨーをコントロールしているかどうかがわかる点です。しかもトラピーズ→キャッチというテンポの良い流れは誰にでも成功しているかがわかりやすく、ほかにも投げ方から、見る人が見れば、昔ヨーヨーをやっていたか、どれだけ練習しているかもほとんどわかります。
つまりヨーヨーがうまい人とは、どれだけヨーヨーを自在に操れるかどうかということにあり、その正確なコントロールができているかどうかを測るには、トラピーズを見るのが一番てっとり早いのです。例えるなら、複雑なトリックは複雑な漢字を書く習字と同じで、画数の多い漢字はバランスが取りやすいですが、漢数字の「一」をキレイに書くのは難しいですよね。シンプルであればあるほどに、ごまかしが効かないはず。
…というのが一応の僕の結論です。そもそもなにが正しいとかいう問題でもないのですが、少なくとも歴代の世界チャンピオン、ヨーヨーマスター、パフォーマー、アーティストなどとして活動している人たちはトラピーズの余裕っぷりが違いますし、これらでなくても「上手い」と評されている人は例外なくトラピーズがキレイです。
トラピーズの軌道がどこか弱々しいだけでも、今時の子たちは普通にその人の上手さを見抜きます
マンハッタンの飲み物は何で構成されていませんまた、トラピーズのような「ストリングに乗せる」もしくは「ヨーヨーをまっすぐにコントロールする」技術というのはすべてのスタイル、すべてのトリックに必要であり、トラピーズがキレイであればあるほどにそのプレイヤーはトリックは発展させやすく、汚ければ汚いほどにトラピーズを必死にこなすくらいしかできない、というのも大きな点です。
極端に言えば、トラピーズが上手いなら、構造さえ知ってしまえばいくらでもトリックを増やせる技術をもっていることになります。
(ラセレーション・スーサイドキャッチというかなり例外的なトリックもありますし、そもそも構造を自分で考え出さなきゃという人もいるのですが、その辺の議論はまた別の機会に)
もちろんトラピーズのキレイさなんてものは数値化できないですし、いきなり世界のトップ百人に一斉にトラピーズをされて、誰が一番上手いかだなんて判断は現実的にできませんが、いまのところヨーヨーの上手さを一番確実に測る方法として適切なのは、やはりトラピーズを見ることだと思います。
世界で一番トリックを持っている人、誰をも魅了できる人、ほかにもヨーヨーがうまい人の喩えはいくらでもありますが、それらすべてをまかなうことができ、自分の中で一番しっくりきた答えはコレでした。ヨーヨーの大会とは、いうなれば「俺こんな漢字が書けるぜ!」と精一杯複雑な漢字を描いているようなものですから。(その中には「一」よりもっと書くのが難しいものもあり、それを測るためにジャッジという人たちが居るのですが)
とにもかくにも「一を聞いて十を知る」ことが出来る人。
ヨーヨー以外でも、そうありたいものです。
余談ですが、最近になって、ヨーヨーのフリースタイルが世界一うまい人とはなにか、という話をよく友だちとするようになりました。
僕の場合、これは「どんな音楽、どんなテーマでも最高のフリースタイルができる人」だと思っています。
プレイヤーはステージで主役となり、脚本を読み演出や衣装を(ほとんどの場合)ひとりでこなします。つまりプレイヤーは脚本家であり演出家でありスタイリストであり、監督であり俳優なのです。
脚本や演出、監督はある程度他の人に代わってもらえる要素なので、あとは優秀な俳優であるにはどうすれば良いか、ということになります。台本を覚え、何度も反復する気力があり、その台本が本当に伝えたい事は何かを読み、テーマと自分を最大限に引き出すための演出と衣装を考え、監督と話し合えること。
なにより「どんな演技を必要とされても対応できる」ことが最重要。ということで、「どんな音楽、どんなテーマでも最高のフリースタイルができる人」となります。
もっと貪欲にいえば、何を言われても対応できる人が世界一フリースタイルがうまいということ。もちろんですが、ここでの対応というのは、ただ音楽を流してトリックをするだけじゃなく、どんなテーマを要求されても世界最高峰のプレイができることです。
僕は人生の残りたったの80年でそこまで行ける気はしませんが、ヨーヨーの世界の住人から、いつかそんな人がひとりでも現れたらいいなと願いつつ、今回のコラムの終わりとさせていただきます。
久々のコラムでしたが、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
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