2012年2月7日火曜日

インフルエンザ予防接種は有効か | OKWave

 獣医師でウイルスに専門知識を有しています。どちらかといえば肯定派です。

 まず、インフルエンザワクチンは感染を完全に防御することはできない、というのは本当です。
 その理由は、ウイルスの抗原変異が激しいこと、不活化ワクチンなので細胞性免疫を誘導することができないこと、不活化抗原を皮下経路で投与してもほとんど血中のIgGしか誘導することができず、感染防御に重要な粘膜のIgAを誘導することができないこと、など様々な理由があります。
 ただ、インフルエンザの特性上、生ワクチンを気道投与する、なんてことも当分できないでしょうから、たいして良いワクチンではないのは承知で、「ないよりはマシ」と考えるしかないかな、というところです。

 ただ、

>それで子供の免疫力が減るのならば

 ワクチン接種によって「免疫力」が減る、ということはあり得ません。
 そもそもワクチンによって抗体が上昇して感染防御能を得るのは、「免疫力」があるからです。免疫力がなかったり低ければワクチンも効きません。

 そもそも「免疫力」という言葉が具体的に何を指しているのかよく判らないのですが、ワクチン接種によって自然感染への免疫応答能が低下することはありませんし(ワクチン株と野外株の抗原性が近ければ逆に大幅に増強されます)、いわゆる自然免疫能が低下するといったこともありません。

 感染防御能にはたいして期待はできませんが、血中抗体価を上げることによってウイルス血症状態になることは確実に防御できるでしょうし、肺胞での免疫にはIgGも重要な役割を果たしますから、「重症化を防ぐ」効果は理屈的にもあるでしょうね。

 つまりざっ くり言ってしまえば、「そんなに期待するほどの良いワクチンではないが、打たないよりは打った方がマシ」というあたりでしょうか。

 ちなみに他回答でもあるとおり、ワクチンの有効性を示す報告はいくらでもあります。
 とりあえず「前橋レポート」と真っ向から相反しそうなものをひとつ挙げておきます。

 こちらはいわゆる「まっとうな」論文です。前橋レポートはそうではありません。

 前橋レポートの全文については以下のリンクから読むことができます。

 前橋レポートって「ワクチン反対派」に「疑う余地のない強力な証拠」のように扱われていますが、それはかなり問題ありです。

 まずそもそも前橋レポートは、「ワクチンの有効性」について述べていません。
 レポートの前書きで、「われわれは,本報告書において,インフルエンザワクチンの功罪にふれるつもりはない。また,ワク
チンの感染予防効果,発症阻止効果をくわしく検討する予定がない。ただ,児童,生徒に対する接種が流行阻止に役立つか否か,については強い関心をもっている。」と書かれているとおりです。

 また後書きにも、「私自身,現行ワクチンの効果を多少なりとも認めているが,他のワクチンと異なり効果が悪く,ときに抗原構造の大きく異なるものが流行すれば,ワクチンの効果は殆どないともいえる。しかし,私達が問題視してきたことは,かかる論点ではなく,ワクチン接種方策に係わる行政のあり方およびそれに関連しての調査研究のあり方を論じていることを銘記して欲しい。」と書かれています。

 そのレポートそのものについても、必要な統計処理がされていなかったり、データではワクチンの有効性が見て取れ るのに恣意的に「効果がなかった」という結論に持っていったり、かなり信頼性はあまり高くない内容です。

 まあそもそも、集団接種を独自判断で中止した張本人が、中止した後でその判断の是非を確認するために行った調査なので、「やっぱり効果があった」という結論には非常にしにくい状況で書かれたレポートなので、データの取り扱いにバイアスがかかってしまうのは必然とも言えますね。

 それと、このレポートはいわゆる「論文」ではありません。
 私が上に挙げたような論文というのは、学術雑誌に投稿され、第三者の査読を経て掲載されるのですが、その手続きを経ていない「私的レポート」のレベル、ということです。まあ投稿しても上に挙げたような問題点が多々あるので査読は通らないでしょうが。

 だからといって、このレポートの結果そのものを「嘘」だとまでは思いません。フィールド調査ですから、他に種々雑多な条件が入り込んでくるので、そんな結果が出ることもあるでしょう。
 私が別に挙げた「論文」は前橋レポートとは逆の結果が出ていますが、それも真実であるとは限りません。

 ただ、フィールド調査の宿命である「数え切れないほどの諸条件」を排除して調べたいこと、この場合は「ワクチン接種の有用性」をあぶり出すには、調査の設計、データの処理、考察を最大限に慎重にする必要があるわけで、「論文」として学術雑誌に掲載されるということは、それをある程度のレベルでクリアしている、ということです。「ある程度」で「完全」ではもちろんあり得ませんが。(だって審査する方も人間ですから)
 前橋レポートはそのレベルには達していない、ということです。
 それに加え、書かれた経緯までを考慮すると、その結論にも懐疑的にならざるを得ません。

投稿日時 - 2012-02-04 11:16:19

お礼

回答ありがとうございます。

前橋レポートは確かに論文ではありませんよね。
また論点はワクチンそのものの有効性というわけでもないですよね。

しかも、集団接種が廃止された理由はこれではなくて、単に予算削減が理由ではないだろうか、っていうふうにも聞きました。
でも、もし予防接種に効果がある程度あるならば、任意でも、
受けたい人(子供)には無料で打たせてくれれば良いのに、と個人的には思います。

ところで、子供の免疫力が下がるのであれば・・・と私が書いた理由は、
どこかヨーロッパだったと思いますが、10代の男子に10年くらいにわたって調査をしたら、ワクチンを受けたグループは最初の年には効果があったけど、毎年接種はするものの、別の型が流行るたびにどんどん発症していって、全くワクチンを受けなかったグループは最初は発症率が高くても、その後はあまりかからなかった、というようなものを読んだので、もしもそういうことならば、予防接種はプラスどころかマイナスな気がしてしまって、そのような表現をしてしまいました。
書き方が違っていたかもしれません。すみません。

やはり無いよりはマシという程度なんですね。

ちなみに、テレビなどでインフルエンザはほとんどが子供だ、みたいにやってましたけど、あれは違いますよね?
私はインフルエンザでしたが、病院にも行ってないし、薬も飲んでないし。
大人ならばそういう人だらけでしょうから、実際はもっともっとたくさんの人が発症してそうです。

投稿日時 - 2012-02-06 10:58:21

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