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現在朝日新聞で、ムンプス難聴が取り上げられています。
ムンプスは、 「流行性耳下腺炎」、 「おたふくかぜ」とも呼ばれます。
耳下腺が腫れるのはもちろんですが、広く全身の臓器に感染します。
中でも、 唾液腺、 膵臓、 睾丸などの腺組織や髄膜、 内耳などの中枢神経系に感染を生じます。
ムンプス難聴の多くは一側性で、 聴力損失は重症で 改善しにくい特徴があります。
しかし両側性の難聴は 全ムンプス難聴症例の14.5%とする報告例もあります。
発症年齢は15歳以下が多く、 なかでも5〜9歳に多いとされていますが、 一側性の発症が多いため、 症状を十分に訴えられない幼少児では、 見落とされている可能性もあります。
確実例は、ムンプス発症の4日前から発症後18日までに発症する急性高度難聴ですが、 耳下腺の腫脹なしに難聴が発症することもあります。
これは血液中のIgM抗体を調べてムンプスと診断します。
随伴症状として、 耳鳴り、 めまいを伴なうことがあります。
聴力障害が治癒しにくいのに対して、 めまいは2カ月以内には軽快します。
人工内耳は一側性の難聴では適応になりません。
ムンプス難聴の発生頻度は、これまで、ムンプス患者1万5千人に1人といわれていましたが、日本の調査では20歳以下の7400人のムンプス患者のうち、7人に難聴が発生したと報告されました。(下記の英語の論文)。この7人はいずれもワクチンをしていませんでした。
従って「1000人の子どもがムンプスに罹ると、1人は難聴になる」と覚えておきましょう。
耳鼻咽喉科においては突発性難聴は珍しくありません。しかし突発性難聴と診断された患者の5〜7%はムンプスによる不顕性感染の可能性があることが示唆されているため(血液中のIgM抗体が高い)、 実際のムンプス難聴の発生頻度はもっと高いと考えられます。
おたふくかぜワクチンによる抗体陽転率は約95%で 維持率もよいため、ワクチン接種はムンプス難聴の予防に対しても非常に重要であると考えられます。
Pediatric Infectious Disease Journal:
March 2009 - Volume 28 - Issue 3 - pp 173-175
doi: 10.1097/INF.0b013e31818a8ca8
Original Studies
An Office-Based Prospective Study of Deafness in Mumps
Hashimoto, Hiromi MD*; Fujioka, Masashi MD†; Kinumaki, Hiroshi MD‡; Kinki Ambulatory Pediatrics Study Group
AbstractBackground: Deafness is a rare but important complication of mumps virus infection. Its incidence has been estimated at 0.5 to 5.0 per 100,000 cases of mumps, but recent reports from Japan, where mumps is endemic, suggest that the incidence might be higher.
Objective: Prospective office-based study to determine the incidence of hearing loss in children with mumps.
Methods: Forty pediatric practices participated in this survey. The study population consisted of patients ≤20 years old with mumps seen between January 2004 and December 2006. Clinical diagnosis of mumps was made by experienced pediatricians. Among those from whom written consent was obtained, parents were asked to conduct hearing screening tests by rubbing fingers near the ears twice daily for 2 weeks. Patients suspected with hearing loss were further examined by an otolaryngologist.
Results: Among 7400 children who underwent hearing ability assessment after clinical onset of mumps, 7 had confirmed hearing loss; none had been previously vaccinated against mumps. In all cases, hearing loss was unilateral but severe and did not improve over time.
Conclusions: The incidence of hearing loss in children due to mumps was 7/7400 (∼1/1000 cases), which is higher than previously suggested. Prevention of deafness is another important reason for assuring universal immunization against mumps.
【まとめ】
ムンプス難聴はムンプスの患者の1000人に1人に発症します。
一旦発症すると治療は不可能です。
是非予防接種をしておきましょう。
下で、「ムンプス難聴にかかった方および子どもたちの保護者からのメール」が読めます。
ムンプス難聴にかかった方および子どもたちの保護者からのメール その1
ムンプス難聴にかかった方および子どもたちの保護者からのメール その2
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